視床下部とは
視床下部は脳にある体の機能をコントロールする中枢です。人間が生きるために必要な摂食行動や睡眠などを調節しています。その中には次代に命をつなぐための生殖活動の働きも含まれています。
この機能は現在の体調や環境によって変わっていきます。食欲や性欲は生命体として常にあるわけですが、危機的状況では視床下部は食欲や性欲を抑え込み、防御行動を優先したりするわけです。
視床下部性無月経
妊娠、出産は女性にとっての大きなイベントです。子供を産み育てることは大きな喜びですが、母体に大きな負担も強いることになります。安全な環境、安定した栄養が保証されていないと、母体の命をおびやかすことになりかねません。
脳内の視床下部は、今、妊娠すると危ないと感じれば生殖活動を停止させます。低栄養状態や過度のストレスで生理が止まるのはそのせいです。
3ヶ月、生理が来ない状態を無月経といいます。ダイエット、運動、ストレスで無月経になったものは、視床下部からのコントロールが停止しておこるので、視床下部性無月経といいます。
女性全体の数%、無月経の人の中では35%が視床下部性無月経と考えられています。
どの程度の体重減少でおきるのでしょう
個人差はありますが、BMIが17未満になると生理に不調が出やすくなります。
目安として身長160cmなら43kg以下、155cmなら40kg以下、150cmなら38kg以下は注意です。体重が戻れば、生理はまたおきるようになります。
やせすぎの注意点
やせすぎは低栄養ということです。生理が止まるということは体からの1つのサインです。さらに体重減少が進むといろんな問題が起きてきます。
心機能
心臓の機能が低下し、低血圧や心拍数が下がってきます。結果として体がだるくなったりします。
生殖機能
最初は排卵が止まります。当然、不妊になります。この状態からさらに進むと、卵子の発育も停止します。半年以上生理が来ないケースでは卵子の発育が停止している可能性があります。女性は卵子が発育している時に女性ホルモンが分泌されます。ということは卵子の発育が止まると女性ホルモンが分泌されていない状態なのです。
骨や乳房、子宮の発育
低栄養状態では発育に必要な栄養素が確保できません。さらに女性ホルモンは成長期の女性にとってはとても大事です。乳房、子宮の発達や骨の形成に必要なホルモンなので、うまく発育できないと将来の妊娠にも影響するかもしれません。骨折しやすい体質になることだってありえます。
胃腸
胃腸の活動も落ちてきます。便秘になりやすくなります。
診断と治療
生理が来なくなる疾患はいろいろあります。代表的なのは、多のう胞性卵巣症候群や高プロラクチン血症ですね。ホルモン検査や超音波検査で確認する必要があります。
明らかな体重減少やストレスがあり、他の病気がないことが確認されれば、視床下部性無月経の可能性が高くなります。
治療は体重を増やすこと、過度な運動をへらすことです。ストレスは主観的な物でもありますが、生理が不調なようであれば、ストレスのない生活へ切り替えていきましょう。
体重はおよそ2kgほど増やすことで、生理がもどってくる可能性が高くなります。すぐには難しく1年くらいかかることもあるので、気長に治療していきます。
10代の成長期では骨や乳房の発達の問題もあり、女性ホルモンによる治療(ピルなど)を行います。20代ではホルモン治療は必ずしも必要ではありませんが、不安な人は処方します。