性感染症の代表といえば、クラミジアです。定期的な性交渉があれば、15人に一人が感染していると考えられています。
感染する場所は、子宮、尿道、そして咽頭(のど)ですね。性行為で接触する部位へ直接感染します。
その正体は細菌です。感染すると人の細胞内に入り込んで、分裂してから飛び出して増えていきます。
症状
女性の場合、初期の段階だとおりものが増える程度。性器出血も症状の1つですが、そんなによくある症状ではありません。尿道へ感染すれば、膀胱炎のような症状(排尿時の痛み)もあります。症状だけでは、クラミジアと判断することは難しいでしょう。
とにかくクラミジアのやっかいなところは症状があまりないことなのです。どのくらいの人が無症状なのかは不明な部分も多いのですが、女性だと90%くらいは症状が出ません。男性でも半分くらいの人が症状がないとの報告もあります。
女性は症状がないまま、感染が広がっていくと、下腹部に炎症が起きます。
ここまで進行すると、慢性的な腹痛をもたらしたり、不妊や子宮外妊娠の原因になります。これは大きな問題ですね。
感染率
当たり前の話ですが、パートナーの人数とコンドーム使用の有無は大事です。パートナーが短い期間で変わる10代の女性では8人に一人くらいはクラミジアに感染している可能性があります。コンドームを使用していない人やパートナーが複数いる人は感染率が高くなります。
1回あたりの性交渉では20%の確率で感染します。女性は精液を受ける側なので、感染しやすいのですね。かなり高い感染率です。
症状が出ないのでどうしても知らないうちにもらったり、うつしたりしてしまうのです。
感染したらどうなるの?
クラミジアが生命に関わることはほとんどありません。でも、進行すると不妊、子宮外妊娠、慢性の下腹痛の原因になります。こうなると薬で簡単に治療できないこともあります。男性は女性ほどダメージを受けることはありません。
若い女性にとって、クラミジアは警戒すべき疾患なのです。
検査
子宮の感染にはおりもの、喉の感染にはうがい液を採取します。痛くはなく、内診が恥ずかしい人はご自身でとってもらってもかまいません。尿で検査もできますが、おりものに比べてほんのちょっと精度が落ちます。
検査法は細菌のDNAを増幅して調べる検査を行います。核酸増幅検査と言います。とても精度が高い検査です。一般的には1週間程度で結果が出ます。
ちょっと注意点があって、病院によっては検査当日に結果を知ることができる場合があるのですが、核酸増幅検査でない簡易検査(免疫抗体法)のことがあり、その場合30%の見逃しがあります。即日検査を受ける場合は核酸増幅検査かどうか確認した方がいいでしょう。当院では核酸増幅検査のみ行なっています。結果は1週間後。
クラミジアが疑われる場合は、その他の性感染症も検査しておきましょう。淋病はクラミジアと同時に感染しているケースが多いのです。最近は梅毒も増えてきており、心配な人は検査を受けることおすすめします。
検診しましょう
アメリカの疾病管理予防センター(CDC)は25才以下の女性はクラミジアと子宮頸がん検査を定期的に行うべきだとの勧告を出しています。本来、がんなどの無症状で起きる重大な病気は年齢が大きな発症要因です。生活習慣病やがんの検診は40才以降が対象です。しかし性行為が関係するクラミジアと子宮頸がんは若年女性に大きな問題をもたらす代表的な疾患なのです。
症状がなくても定期的にクラミジアの検査を受けましょう!
治療
クラミジアは放置していても50%が自然治癒するという調査もあります。逆に放置すると20%の人が腹部へと感染が広がるという報告もあります。早く治療するにこしたことはないですね…
治療は抗生剤の内服です。今はアジスロマイシンという抗生剤で治療します。基本的には1回飲むだけという簡単な治療です。このお薬には注意点があって、5人に一人くらいが下痢になります。アジスロマイシンを飲むときはお出かけしないように気をつけましょう。
その他の注意点として、治療を始めてから2週間は性行為をひかえましょう。クラミジアは完全に治るのに10日間ほどかかります。他の細菌(例えば淋病)だと5日くらいで治るのですが、クラミジアは人の細胞に出たり入ったりしてるので、治療期間が長くかかるのです。2週間たってないと人にうつしてしまいます。
パートナーへの治療は大事です。
クラミジアに感染している人のパートナーが感染している割合は70%くらいです。感染していると思っていた方がいいですね。言いにくいことかもしれないですが、二人できちんと治療しないとなかなか治りません。
アメリカの疾病管理予防センター(CDC)はパートナーの感染確認をせずにすぐにパートナーへの治療を開始すべきとの方針を示しています。日本だと保険診療や薬事法の問題から難しいですが、それくらい迅速に対応してもいいのですね。
治療後は再検査をしましょう。
1ヶ月後に再検査します。治療に少し時間がかかるのでわざと間を開けて検査しましょう。
治療後に再検査をすると、クラミジアがまた出る人もいるのですが、多くがパートナーからの再感染だったりします。治療したつもりで、またなっていることがあるのですね…
再検査は大事です。