ピルの開発
ピルは避妊を目的として開発されました。1960年にアメリカで使用されるようになってから様々なブランドのピルが開発されています。避妊効果を保ちつつ、できるだけ副作用が少ない製品が開発されているわけですが、製品によってちょっとした違いがあります。それぞれいいところもあれば、欠点もあるので、ピルには多くの種類があるのです。
ピルの性質を決めるのは、ホルモンの種類と量、飲み方、自費と保険の違いです。
目的別オススメのピル
いろんな種類のピルがありますが、とにかく目的に合わせたオススメを紹介します。
避妊のために飲む人
ラベルフィーユがオススメ。
不正出血はなく、性欲減退もおきない。生理がしっかりくるのでわかりやすい。料金もジェネリックなのでお安めです。
生理痛を緩和したい人
ジェミーナがいいです。連続内服ができるので、生理が3ヶ月に一度でいいのはラクでしょう。血栓症リスクが低いのも安心感があっていいですね。不正出血が多いのが欠点。
保険処方のピルなのでいろいろと制限はあります。3ヶ月までの処方、薬局に取りに行く必要がある、定期的な子宮の検査が必要、料金はやや高め。
自費のピルならファボワールがいいですね。
ニキビを改善したい人
ファボワールがオススメ。料金的にもリーズナブル。保険処方ではないのでわずらわしい検査はあまりありません。
ファボワールで効かなければ、ヤーズに変えてみましょう。男性ホルモン作用は一番少なくニキビに効果的と考えられます。保険処方のめんどくささと性欲の減退が欠点。
PMSの人
ヤーズです。PMSにエビデンスがあるのはヤーズだけです。しかし、どのピルでも飲めばPMSはかなりの人が改善されます。
トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユは3相性なので、ホルモンの変動が起こるためPMSの人にはオススメしません。
一番安いピルがいい
フリウェルです。保険処方のピルです。1シートあたりの料金は3割負担として800円くらい。ただし、保険診療なので再診料、処方箋代、特定疾患管理料、調剤料などなどが受診のたびにかかります。3ヶ月まとめてもらうなら1シートあたり1500円程度とかなりお安め。
しかし、生理痛のための処方なので定期的に超音波の検査などが必要です。
1シートづつもらうと2300円くらいになるので、自費のラベルフィーユの方が安くなります。
ピルの種類
トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユ
自費のピル 3相性
生理痛やニキビへの効果は限定的だけど、副作用があまりありません
避妊だけならこちらのピルが飲みやすくておすすめ
不正出血が少ないです
当院では2200円から
マーベロン・ファボワール
自費のピル 1相性
ニキビ・生理痛にそこそこきく、生理の調節がしやすい
ちょっとむくんだり胸がはりやすく、不正出血が多い
ニキビが気になる人はこのピルです
当院では2200円から
シンフェーズ
自費のピル 3相性
生理痛にそこそこ効きます
当院では扱ってません
ルナベル・フリウェルULD
保険のピル 1相性 超低用量
生理は少なくなります
生理痛を緩和して、リーズナブルなピルが希望ならフリウェルがおすすめ
約800円から(1シートあたり) + 約1500円(再診料、調剤料等)
ジェミーナ
保険のピル 1相性 超低用量ピル
生理痛に効き、長期内服が可能
副作用が少ないタイプなので生理痛緩和目的なら一番おすすめ
約2000円(1シートあたり) + 約1500円(再診料、調剤料等)
ヤーズ
保険のピル 1相性 超低用量ピル
生理痛に効き、長期内服も可能、ニキビとPMSに効果的
不正出血が多く、性欲・やる気が減退する人も
生理痛、ニキビが気になる人は選択肢の一つです
約2000円(1シートあたり) + 約1500円(再診料、調剤料等)
ホルモンの種類による違い
ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンを組み合わせたお薬です。そのうち、卵胞ホルモンはすべてのピルで同じものが使用されています。黄体ホルモンはピルによって種類が異なり、そのためピルの副作用の出方などが少し変わったりします。
ノルエチステロン
第一世代の黄体ホルモン
シンフェーズ・ルナベル・フリウェルで使われています
可もなく不可もない作用
男性ホルモン作用は真ん中くらい
血栓症リスクも真ん中くらい
ノルゲストレル
第二世代の黄体ホルモン
トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユ・ジェミーナで使われています
全般的な副作用は少なめ、ニキビの人にはオススメしません
男性ホルモン作用あり
血栓症リスクは一番低いとされています
デソゲステロル
第3世代の黄体ホルモン
マーベロン・ファボワールで使われています
ニキビの人にオススメ
男性ホルモン作用低い
血栓症リスクは普通
ドロスピレノン
第四世代の黄体ホルモン
ヤーズで使われています
ニキビの人にオススメ
男性ホルモン作用を抑えます
血栓症リスクは他のものよりも高いようです
低用量ピルと超低用量ピル
ピルに含まれている、卵胞ホルモンが血栓症や頭痛などの注意すべき副作用の原因になっています。
このホルモンをできるだけ少なくした方が副作用のためにはいいので、ちょっとずつ少なくなっていき、現在使われている低用量ピルの量に落ち着きました。
それよりもさらに量が少なくなったのが、超低用量ピルですね。日本では原則保険診療で処方するピルだけが超低用量のピルになります。生理の量と副作用が少なくなるのは大きなメリットですね。でも出血が多いのが難点です。
自費と保険の違い
ピルは避妊目的のお薬でしたが、生理痛にも効果があります。生理を少なくコントロールできるので、子宮内膜症にも効果があります。このため、日本では治療薬として認可されました。保険の処方は治療目的で処方するということです。治療目的で処方するためには、診断をしっかり行うための検査が必要であり、処方数も3か月までと制限があります。
保険のピルのメリット
副作用が少なく、生理痛に効果の高い超低用量ピルは保険のピルだけ。
ニキビとPMSに効果的なヤーズは保険処方のみ。
ピルの中でもリーズナブルなフリウェルは保険処方のみ。
保険のピルのデメリット
院内処方が受けられない所も多いので調剤薬局でもらう必要がある。
生理痛の検査を定期的にする必要があるのはわずらわしいかもしれません。
料金はフリウェル以外はむしろ自費より高くなります。
自費だと半年まとめてもらえますが、保険は3か月までです。
1相性と3相性
ホルモンの量が飲む時期によって変化せず一定の量のもの1相性。時期によって少しずつ量が 変わるのが3相性です。
ほとんどのピルは1相性でホルモン量が変化しません。ラベルフィーユやトリキュラーはホルモン量がちょっとずつ増えていきます。なんのために量が増えるかというと予定外の出血を減らすためなのです。ホルモン量が多いほど出血しにくくなります。でもホルモン量が多いと副作用も起きやすくなります。前半を少なめにして後半を多めにすることでトータルのホルモン量は増やさずに出血しにくいように工夫しているのです。
たしかに3相性のピルは出血しにくいです。これは利点なのですが、4週間でワンセットに量が決められているので、生理の時期を移動したり連続で内服するには不向きという欠点があります。
周期的な内服と長期内服
ピルの内服は基本的に3週間飲んで、1週間休む、28日(4週間)周期です。だけど生理を1ヶ月に 1度必ず起こす必要はありません。ピルの内服期間は特に決まりがあるわけではないので、もっと長期に飲むことも可能なのです。日本ではヤーズとジェミーナが長期内服できるピルです。 ヤーズはおよそ4ヶ月、ジェミーナはおよそ3ヶ月まで内服することが可能です。生理痛がひどい人にとっては生理がこなくていいのでラクですね。
実は他のピルでも多少長めに飲んでもかまいません。1相性であれば延長して飲むことで生理の時期を簡単にずらせますし、生理の回数も減らせます。